金型構造の考察【EGウイングガンダム】【スライド金型】

金型構造考察

先日発売されたEGウイングガンダムを購入しました。

EGは少ないパーツ数でパーツの色分け、広い可動範囲を実現するために金型技術が凝ったものになる傾向があるので、ランナー状態から楽しめるキットだと思います。

今回はその中でも、スライド金型の使い方に特殊なものを感じたので、それを中心に解説したいと思います。

※仕事柄射出成型部品の金型について考えることが多いためその延長上での自分の考えを述べた記事です。バンダイさんの公式見解でもなければ、間違った話をしている可能性も十分あるとのご理解をよろしくお願いします。

スライド金型とは

通常の金型は2つに分割するようにすることで、樹脂を流した後の部品を取り出します。

ただし部品形状に制約があり、金型の開く動きを阻害するような部品形状は成形することができません。

その制約を一部取り除くため、金型を3つ以上に分割し、通常の金型の開く方向とは別方向に、何らかの機構を取り入れて金型を動かすようにすることがあります。

その中で、金型をスライドさせるように動かす機構を入れた金型がスライド金型で、特にガンプラで用いられるのは主にスライドコア金型と呼ばれる機構です。

金型に機構が盛り込まれるため、成型機は通常のもので成形することができます。

スライドコア金型についてはこちらでも説明しているので見てみてください。

EGウイングガンダムとスライド金型

EGウイングガンダムはランナー3枚で構成されていますが、すべてのランナーにスライド金型が用いられていました。

部品点数を抑えるためにスライド金型が有効に使われていることがわかります。

そんなスライド金型の活用含め、EGウイングガンダムのランナーを見ていて気づいたことを列挙したいと思います。

気づいたこと① スライド金型を使った引掛かり形状

EGウイングガンダムの肩関節はランナー上斜めに配置され、スライド金型で内側がくり抜かれています。

斜めに配置することで肩関節軸を斜めに切欠き、後ハメができるようにしつつもMS形態、バード形態共に見栄えをキープしています。

バード形態は商品説明で全く触れられていませんが、バード形態時に丸見えになる肩関節にモールドが掘られていたりして設計上はかなり意識されていると感じています。

この斜めに配置した肩関節に、組み込んだ部品を抜けにくくするための引っ掛かり形状も設けられています。

これは通常の前後に開く金型部分に彫られた突起形状ですが、スライド金型と組み合わせることでうまくひっかりの機能を持たせることができています。

おそらくこれがないと肩関節がぽろぽろ取れてしまうと思われるので、金型の制約の中非常にうまく仕込まれた機構だと思います。

気づいたこと② ヒザ部外装のスライド金型の使い方

通常ガンプラで見るスライド金型は嵌合用の穴であったり複雑な構造を再現するために採用されているイメージがありました。

そのような思い込みがある中EGウイングガンダムのヒザ部外装を見ると、特に複雑な構造がなく、通常の前後に開く金型でも十分再現できそうな内部構造でしかない部分であるのに、スライド金型が使われていることに気づきました。

不思議に思ってよく観察すると、膝とふくらはぎの三角形の空洞部が前後に開く金型では再現できないことに気づきました。

部品前後を撮影した1つ前の写真でこの三角形の空洞部が見えないことから、金型の動きで表現できない部分であることがわかりました。

そう思ってパーティングラインを見てみると次の写真の赤い範囲がスライド金型で成形されているラインだと考えました。

かなりの精度で成形されているため非常にわかりにくかったですが、生産数が増えればこの部分にバリが出てくるのではないかと思います。

構造の再現だけでなく形状の再現にもスライド金型を積極的に使って、意識的に部品点数を減らしていることがわかりました。

設計する方は非常に大変だと思いますが、その柔軟な発想に脱帽です。

気づいたこと③胸部接続ボールの成形

腹部は胸部にボールを整形し、腹部の受けで接続するEGや最近のHGでよくある構造です。

ただし胸部の接続ボールの成型に一工夫あることに気づきました。

胸部をできるだけ一体で成形するため、部品に穴をあけてボールを成形していました。

もちろん開口は完成した際には見えない位置に設定されているので完成後は気になりませんが、この一工夫で部品が一つ減らせた形になっていると思います。

私はHGは頻繁に購入しないためもしかしたら最近のHGはこういう構造が当たり前なのかもしれませんが、個人的に驚きポイントでした。

材料表記

こちらは完成時には全く関係ないことですが、ランナー上の材料表記が部品番号タグの裏に記載されていました。

最初は4色成形のランナーで気づいて、4色成形で色ごとに樹脂が異なる製品もあるからここに書いているのかと思ったのですが、単色成形のランナーも番号タグ裏に記載されていました。

これはいつから変わったのか、どういう意図があるのか推察できませんが、変化としては面白いと思います。

素組完成

いろいろランナー状態を観察して楽しみつつ、ぱちぱち組み立てて素組ができました。

EGはこの楽しみ方が個人的にとても気に入っています。

さいごに

今回はEGウイングガンダムをランナー状態で確認しながら、金型構造に思いを馳せました。

スライド金型を積極的に使って部品点数を削減し、効果的に可動するEGはプラスチック成型品の魅力を感じる非常に良い素材だと思います。

ランナー状態で金型の構造を想像するのは難しいところもありますが自分の中で答えが出た時はパズルがはまるような爽快感があるので、皆さんもぜひやっていてください!

ではっ!!

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