こんにちは、MIBです!
遅ればせながらHGエアリアル、エアリアル改修型の2体を同時に購入することができました。
このエアリアル系列のキットはインモールド成型が採用されているということで、部品の確認がしたいと思っていたのですがずっと入手の機会に恵まれませんでした。
しかしこの度大量の再販がかかったのか、ふらっといつもの模型店に立ち寄ると大量に入荷していて両方とも購入することができました。
ですので晴れてインモールド成型について、部品を眺めながら金型構造を考察してみたいと思います。
※仕事柄射出成型部品の金型について考えることが多いためその延長上での自分の考えを述べた記事です。バンダイさんの公式見解でもなければ、間違った話をしている可能性も十分あるとのご理解をよろしくお願いします。
※これまでの金型構造考察記事もよろしければご確認ください。
インモールド成形のランナー
エアリアル、改修型ともにFランナーがインモールド成形になっています。
インモールド成型とは
一般的な内容について詳しい解説はネット上で公開されていますが個人的理解で説明すると、あらかじめ模様の印刷された箔を金型に挟み込んだうえで樹脂を流し込むことで、樹脂表面に模様を転写する技術となります。箔はロール状に作られていて、成型が終わるとロールを回転させて次の箔がセットされるような構造になっています。家電や携帯電話などの外装部品の装飾に用いられることが多い印象です。
図で説明すると以下のようになります(図の赤ラインの断面で考えています)。
インモールド箔セット
金型の間にインモールド箔をセットします。インモールド箔はキャリアシートに載せられているので、キャリアシートの巻き取りで定位置にセットできます。
型締め
金型を締めます。この時に箔が金型にある程度沿うようになります。
成型
樹脂を射出して成形します。この時の圧力で箔が金型に押し付けられて、箔を含めて正常な部品形状になります。
型開き
開く際に箔がはがれて部品が取り出せます。
※ネット上の説明もいくつか見てみましたがコア側にインモールド箔を持ってきている説明が多く、一方でエアリアルはキャビ側にインモールド箔が来ているので実際のエアリアルの部品に合わせて図解を書いてみました。
この内容は多分に憶測を含みますのでご了承ください。
キットに見るインモールド成型らしさ
インモールド成型のランナー状態を眺めていると、通常の部品のランナー状態とは違った特徴があることがわかります。
裏面がランナーまで含めてなだらかな曲面
インモールド箔を密着させるために不要な段差を作らないように、箔の作る曲面がなだらかになるようにランナーまで含めて形状付けされています。
箔の余白残り
インモールド箔がランナー枠内に残っている部分がありました。部品外の箔は大半はエアブローで処理されますが残ってしまったようです。エアリアルはわずかに残っている程度でしたが、改修型は結構盛大に残っていました。
ランナーへのゲートが側面に配置されていて大きい
プラモデルにおいてランナーから部品への樹脂流入口をゲートと呼びますが、金型からランナーへの樹脂流入口もゲートと呼びます(正確にはランナーを含めた製品に対する樹脂流入口がゲート)。
インモールド成型ではこのランナーへのゲートが、ランナー側面に大きく配置されて刃物でカットされた形になっています。
通常のゲート構造など含めてこのあたり別記事でまとめたいと思いますが、この刃物でカットするようなゲート構造自体がガンプラでは珍しいです。
ウェルドラインの制御
インモールド成型は背面のインモールド箔が見えるようにクリアの樹脂で成形されるのでウェルドが部品上に来ると見栄えが悪くなり、対処方法もなくなってしまいます。
その対処としてウェルドが部品上に来ないように、樹脂が部品を1方向に流れるようにランナー形状が調整されています。
部品外観側にEピン
通常Eピンは部品の裏側に配置されます。これは形状的な理由があり
- 外観側は金型を磨いて滑らかにすることが多いため金型から離型しやすい
- 裏側は金型が放電目で残されたり嵌合ダボなど構造物があるため金型から離型しにくい
という特徴から、部品裏側が金型に残るようにして、Eピンで押し出すようにする方が合理的なためです。
ただしインモールド成型ではインモールド箔がある側がどうしても滑らかになるため最初に離型してしまいます。逆にいうとインモールド箔のない側が金型に残るので、そちら側をEピンで押し出すような型構造とされています。
結果としてエアリアルのインモールド成型は裏面に箔を持ってきているため、部品外観面にEピンが設置されている形となります。
妄想に近い考察
キットのインモールド成型部品を見ていて、この小さな2パーツのために専用の金型を作って、印刷版を作った上で箔も作って、時間をかけて成形していると思うと非常に効率が悪く、何かもっと工夫があるのではないかと感じました。その視点でランナーをよく見てみると、タグの左側にサイコロの6のように凸形状が6つあることに気づきました。同時に購入したエアリアル改修型は凸形状が1つでした。
これって、実は金型の中に同一のランナーが6個あって、それぞれの識別のためについているのでは?と考えています。つまり次の図のように、1つの金型にキットのインモールドランナーが6つ作れるだけの型が掘ってあるのではということです。
(図だと2番目と5番目のランナーに早々に樹脂が流れてしまうのでもう少し形状に工夫はあると思います)
そう考えると、金型や箔の設備投資も1/6になるし、1回の成型で6キット分取れるので効率はかなり良くなると思います。またランナーへのゲートが側面に配置されていて刃物でカットされたような形状をしているのも、6つつながって成形された状態からカットして梱包していると考えるとすごく合点がいきます。
ネットでエアリアルのランナー状態を紹介している方の画像を確認すると3や4のものも確認できたので、結構当たりなんじゃないかと感じています。
さいごに
今回はインモールド成型について掘り下げてみました。
2部品のみのランナーでしたが通常のランナーとは違う部分を見ていくとインモールドならではの部分であると実感できて楽しかったです。
今回は裏面をインモールド箔にする構成でしたが、インモールドを調べていると表面を箔にする構成や、裏表共に箔を持ってくるダブルインモールドなんていう技法もあるようで、今後ガンプラにも取り入れられていけばもっと表現が豊かになるなと妄想しています。
ではっ!!
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